痛いのに「異常はありません」と云われたら。
「病・怪我・体の不調は医者に診てもらえれば治るものだ」
19歳、勉強漬けの大学受験浪人生活が開け、3月スキー旅行に出かけるまでは何の疑いもなく、そう考えていた...という話、もう何度もいろいろなところでしていますが....。これがこの道に入るきっかけになったほどの大きな体験でした。
当時何件もの整形外科を受診するものの、「レントゲン上、骨に異常がないから大丈夫だね」というどこでも同じ判断、そして足を触らない先生もいた。この「大丈夫」とは何が大丈夫だったのでしょうか。その後痛みは日に日に強くなり、立ち仕事のアルバイトは勿論のこと通学にも支障をきたしていました。
「誰か俺の足を治してくれ...」
藁をも掴む気持ちで10軒目で初めて通院した接骨院が全てを解決してくれた。
その経験が今でも大切な指針になる。
先日も同じような学生の患者さんが訪れました。
「クリニックを受診した際に骨に異常もないから問題ない」と言われたものの痛みが全然引かないため、うちの噂を聞いて受診していただいた方でした。詳しくは書けませんが、この件はスタッフ間でかなりの議論になりました。
*クリニックの診断通り、骨には異常がないという前提で施術計画を考える、*クリニックの診断を考えずに一から見直してみる、*症状から考えられるものを一つ一つ確認したい、*院長はどう考えるのか待っているもの(笑)。どれも悪くない...まぁいろいろでした。
患者さんを目の前にして「自分(スタッフが)ならどう考えるか」をとても大切にしています。当院のように有資格者が多く在籍していると、私自身の判断を見たいと思うスタッフも少なくありませんが、1回で答えを出していたら施術者としてなかなか育たないのではないかと経験から感じています。
「患者さんに取ってベストな答え」を導く過程を大切にし、皆の前で口に出して見ることで感性の違う様々な捉え方が身につくものと思っています。そして少しづつベストに近づいていく。そもそも人の体に携わる中で「他人に相談をする」という選択肢があるのなら、それを捨ててはいけないということなんです。
患者さんや私が経験したことを誰でも経験する必要はありません。できたらしないほうがいいかもしれない。当院で働くスタッフもまた同じ経験をする必要はないですが、せめて患者さんの思いを汲み取り、親身になれる施術者が一人でも多く育つことを願いながら若者と向き合っています。
19歳当時の私が悪かったのか、診る側が悪かったのかはわかりません。ただ何件も病院を渡り歩くと、患者の思いは件数を重ねるごとに深くなります。それを聞いてもらえるかという不安は、痛みとはまた別のもの。
上記の患者さんは、まずは「骨に異常がない」という直近の医師の診断を尊重する形で施術計画を立てました。有期限で行うことで、痛みが緩解しない場合は再度別の医師の受診をしていただくことを約束しました。再診の結果残念ながら「骨の異常」が見つかりました。しかし笑顔で病院から戻って来ました。痛みの答えが出たからなんだと思います。
もし痛みがあるのに「異常ない」といわれたら...。
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